憎しみも愛
父が嫌いでした。
自由奔放で、時に破天荒で、暴力と破壊のような人。
それに苦しめられてきた母の姿を見て憎しみを持つようになったんだと思う。
私は父からたくさんの愛情をもらっていることをもちろん知っていた。父と子として仲が悪いわけでもなかったが、ずっと心の底に憎しみ続けていた。
あるとき、父から
『病院で検査したら大腸がんだった。死ぬかもしれん。』
私は上の空だった。
父の母、おばぁちゃんが死んだ時、涙ひとつ出なかった。
おばぁちゃんも破天荒で、暴力と破壊のような人だった。
それに苦しめられてきた母の姿を見て子供ながらずっと憎しみを持ち続けていた。
おばぁちゃんが死んだ時に、
この苦しみは終わったんだってお通夜の悲しみムードとは相反する気持ちしかなかった。
だから今回もそうなのかもしれないって思っていたのに、
父の言葉を聞いて
お風呂の浴槽の中
いつも考えことで埋め尽くされた頭が真っ白になって静かだった。
次の日、仕事の休憩中にぽろっと昨日の出来ごとを整理しながら友達のグループにメールを打つ。
ポロポロと涙が目に溢れていた。
あれっ?
情緒不安定だ。どうして??
ダムが決壊したように涙が止めどなく押し寄せてきた。
憎しみの底が割れ、純粋な愛が浮かび上がってきたんだと思う。
それはきっと憎しむくらい深い愛情なんだと知った。
憎しみも怒りもきっと全て愛。