見えない星

彼女はいつも寂しい瞳をしていた。

「おはよう!!」
と声をかけると
「おはようございます」
と丁寧に返事を返してくれる礼儀正しくてかっこいい子だった。 

華奢で線が細くて顔もカッコよくて
小さなお店で一緒に働くスタッフだった。
お客のいない暇な時間はいつも話ばかりしていたけど彼女は
「そうなんですね〜」
としか言わないから話はそれっきりで終わってしまうのがいつもだった。

しかしある時
私がたぶん大きな失恋をしたのか
上司に怒られたのか忘れたけど何かあって
「もう……辛い!辛いわ!!こんなことなら消えてなくなりたいわ!!」
「あぁ。もう生きていける気がしない。
死んでやる!死んでやるわ!」
と大いに悲しみをブチまけ今にも泣き出しそうになった時
「私も死にたくてしょうがないんです」
とあの寂しそうな目で言うのだ。
「なんで??死にたいの?。」
「わかんないです。気がついたらいつもそんなことばっかり考えてて……。
いつからか自傷しはじめて高校生の頃は自殺マニュアルとか読んでて……。」

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6兆年と一夜物語を聴くと彼女と話したあの話を思い出すのだ

お店のセール時期にだけ店内bgmから
流れるこの曲。
人の優しさも寂しさも全く知らない子供が同じような子と出会って、愛の温かさを知ってゆく。
あの子も私も知らないのかもしれない。
ほんとは身近にあって気づかない真昼の星の存在を。